江戸時代、日本は鎖国をしていました。ただオランダとの貿易による舶来品は入っており、その中に豪華な革製品がありました。それは、なめした仔牛の皮に金属箔を貼り、次に文様を彫った型に押し当て、浮き出た文様に彩色をほどこし壁紙として使われていました。主にヨーロッパの宮殿や教会などに用いられたもので金唐革と言い、動物の皮から作った金唐革を日本人が和紙で模造したのが金唐革紙です。

異国から届いた金唐革は、早速珍しい物好きの大名や豪商、文化人達が身の回りの装飾品として刀の鞘や馬具、煙草入れに用いました。実に高価な贅沢品です。庶民には手の届かない高嶺の花。そこで何とか和紙を加工して作れないものかと考えたのです。いかにも日本人らしい発想です。江戸時代は、和紙の種類も豊富で加工技術が発達し、渋紙や油紙を活用した衣類・建具は勿論、 革に似せた紙(擬革紙(ぎかくし) も作られていた、まさに和紙文化の成熟期でした。 試行錯誤の上幕末にようやく金唐革紙が完成し、明治6年ウィーン万国博に出品した大判の金唐革紙が好評を得たのです。ヨーロッパで作られた金唐革を日本で再現して改めて輸出できる程になり、バッキンガム宮殿にも使用されました。何しろ和紙は革より衛生的で価格も安く出来るのですから。しかし近代化の波が押し寄せると金唐革紙は和紙から洋紙になり、品質が低下し、やがて姿を消すことになります。
では金唐革紙を貼り付けた木箱を紹介しましょう。
しっかりした厚手の和紙に凹凸の草文様が漆で彩られ、重厚感や高級感が感じられます。葉が茂り、蔓がのびていく文様は繁栄を意味します。古さを感じさせない鮮やかな漆の色の力。咲いた花の朱色は生命を連想させます。大切な手紙などを入れたのでしょうか、かなり使いこまれていた為、箔が控えめに見える程度ですが、実はきらびやかな箱だったと思われます。どこか異国の印象を与える箱です。
核大したもの
考えて見ますと素材の和紙は勿論のこと、耐水性があり塗料として使われた漆、版木棒の桜、みな日本独特のもの。刷毛で叩いても強い和紙を漉く技、浮世絵のための版木彫りと摺りの技、箔打ちの技、それらの技法を限りなく駆使して作り上げた職人の探究心も日本人ならではのこと。金唐革紙は東洋と西洋の全く違うものどうしが合わさって生まれた一品です。