張子は人々のさまざまな願いを込めて人々の暮らしの中に身近にあった。安産や祈願をはじめ子供が愛らしく健やかに成長してくれるように、また商売繁盛や縁起を結び祈願するもの、災厄や穢れを祓うものな ど様々な信仰の対象をして、あるいは玩具としても時代じだいを生きて きた。
日本への張子の伝来は中国の『起き上がり』だったと言われ、その後、室町時代には起き上がり小法師として発達していった。江戸時代中 頃から庶民の生活に少しずつゆとりが生まれ、あちらこちらで多くの玩具が作られ、それが地方にも移り郷土独特のものとなった。
作り方は、まず木型に和紙を何枚ものりで貼り合わせ乾いてから木型をはずし、又和紙を貼って彩色をする。その特有の性質からシンプルな型が多いので、おのずと彩色に気配りされている。
ここに紹介する張子は、洋の東西や新旧のへだたりなく楽しめ、古いものほど良く使われており親しみに溢れていて心惹かれる。慕情や懺悔、畏敬など人間の心に住むさまざまなものを無邪気な表情や凛とした表情でこちらを見ているが、その目は慈愛に満ちている。子供はもちろん大人にとっても豊かにしてくれるあいすべき玩具達である。一つ一つの玩具の云われは省略するがそれぞれまつわる話は奥が深い。
日本の玩具の多さや質は類を見ないものであり、単なる資料にとどまらず日本の文化を担っている意義はおおきい。