ここに地図が2点ある。日本地図と天下総図(つまり世界地図)。日本地図はおおよそ今の地図に近いのだが天下総図に目を通すと、正確さにおいてはまったく欠けている。大胆でまるで李朝の文房具の図を見ているようである。物の大小、遠近等のこだわり、概念を打ち破った発想の見事さ。地図の使命を通り越して一つの図案のようになっているところが面白い。初めてこれを見た時「えっ」と声を出してしまった。
日本地図
天下総図
独創的、天衣無縫、天真爛漫、自由闊達。中心は中国、黄河は流れ昆崙峻峰そびえ、蕃胡あり西域あり、日本国は朝鮮の隣。ただ、主なところを中心に描くのはよくある技法だが、何事にも束縛されない人の心の底抜けの自由さと明るさがこの地図にはある。
以前、何かの本で韓国に旅をした人の話を思い出した。たしか木の盆だったと記憶しているのだが、日本では考えられない程いびつであった。その事を指摘すると「曲がってわるいか」と平然として答えたらしい。どこかこの地図と通じる物があると、ひとりで納得してしまう。